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田園調布動物病院

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ウサギの歯の病気

ウサギの歯は切歯(前歯)も臼歯(奥歯)も生涯にわたって伸び続けます。
歯の咬み合わせが悪いことを不正咬合といいますが、うさぎは、いったんこの不正咬合になってしまうと完全に治すのは難しく、さらに様々な病気を引き起こすことがあります。ここでは、その不正咬合に関連する疾患をすこし詳しく説明します。

●切歯の不正咬合

ウサギの切歯は一年間に約10~12cmも伸びます。通常は食べ物を咀しゃくするときに上の歯と下の歯が擦れ合い、磨耗することによってある一定の長さが保たれています。
ところが切歯の噛み合わせが悪いと正常な歯の磨耗ができなくなるため、歯はとんでもない方向に向かって伸びていってしまいます。これを不正咬合と呼びます。

◎原因

切歯の不正咬合は、遺伝的なものが多いとされています。
特にダッチ系やロップ系は多いとされています。
後天的な要因では、咬むこと、すなわち咀しゃくの回数が少なくなってしまう柔らかい食餌や繊維分の少ない食餌の多給、また金網など極端に硬いものをかじることで、歯根を痛めてしまったり、事故で切歯を破切してしまって歯の向きに変化が生じてしまうことなどが挙げられます。

◎症状

異常な方向へ向かって伸びすぎてしまった切歯は、一見するとすぐに判ります(写真1)。伸びた歯はカーブして口唇部や歯肉に食い込んで潰瘍を形成します。
主な症状として

  1. 食欲が落ちてきた
  2. うまくペレットをくわえることが出来なくなる
  3. 歯ぎしりをする
  4. ヨダレが出ていたり、 顎の下が濡れている

などがあります。

◎治療

伸びすぎてしまった歯は、専用の器具を使って正常な長さに切りそろえます。
ニッパーなどで安易にカットしてしまうことがありますが、無理な力でカットしようとすると、縦に割れてしまったり、歯根を傷めることがあるので出来るだけうさぎに詳しい獣医師のもとで行なってもらいましょう。
しかし、処置を行ったとしても、うさぎの歯は前述したように生涯にわたって伸びつづけるため、定期的に行わなければなりません。

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写真1:切歯(前歯)の不正咬合

●臼歯の不正咬合

ウサギの臼歯は名前の通り平らな臼状になっていて食べ物をすりつぶす役割を持っています。左右に臼歯を擦り合わせる動きにより、自然に磨り減り常に一定の長さに保っています。
ところが上顎と下顎のバランスが悪いと臼歯はうまく磨り減らないため不自然に伸びてしまい過長歯という状態になります。
そして臼歯の一部が尖ってきてしまい、頬の粘膜や舌を突き刺して潰瘍を形成します(写真2・3)。こうなってしまうとウサギは痛みのために餌を食べることができなくなってしまいます。

◎原因

切歯の不正咬合と同様、遺伝的な要因や、後天的な要因では、咬むこと、すなわち咀しゃくの回数が少なくなってしまう柔らかい食餌や繊維分の少ない餌の多給、また切歯の不正咬合によって二次的に臼歯の不正咬合を起こすこともあります。
歯周病などで歯根に感染を起こすことによっても発生します。

◎症状

初期には堅いものを食べなくなり、やわらかいものだけを食べるようになります。
尖った歯によって舌や頬の粘膜にできた潰瘍がひどくなってくると痛みが増すため、何も食べなくなってしまいます。
切歯の過長と同様、ヨダレが認められることもあります。
主な症状として

  1. 食欲が落ちてきたヨダレが出ていたり、顎の下が濡れている
  2. 硬いもの(ペレットなど)を好まなくなる
  3. ペレットをくわえてもポロッと出してしまう
  4. 歯ぎしりをする
  5. ヨダレが出ていたり、 顎の下が濡れている
  6. 食べたそうにしているが、食べれない

などがあります。

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写真2:上顎臼歯の過長歯。
歯が外側に向かって伸びて頬の内側を刺している

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写真3:下顎臼歯の過長歯。
歯が内側に向かって伸びて、舌に潰瘍を形成している

◎治療

不自然に伸びてしまった臼歯を削らなければいけません。
手前に見える切歯の処置とは違い、臼歯の処置は口を開けたままにしなくてはならないため、基本的には麻酔が必要となります。
麻酔下で尖った部分をドリルなどを用いて削ります。
臼歯の不正咬合に関しても切歯の不正咬合と同様にほとんどの場合定期的に削らなければなりません。

◇不正咬合により引き起こされることのある病気◇

●顎骨膿瘍

切歯・臼歯の不正咬合は、歯は口の中に向かって伸びるだけでなく、歯の根が上顎や下顎に向かっても伸びてしまいます(写真4)。
反対向きに(下顎骨や目の方に向かって)伸びてしまった歯はそこで感染・炎症を起こし、膿瘍(膿の入った袋)を作ります。
うさぎの膿は時間がたつとチーズ状に固くなってしまうため、見た目には、デキモノのように見えます(写真5)。
上顎に膿瘍が出来てしまった場合、チーズ状に固くなった膿が眼球を押し出し、出目金のようになってしまうことがあります。
治療は、異常な歯を抜くこともありますが、うさぎの顎骨は非常にもろく、抜くときに骨折を起こしやすいことや、犬・猫よりも血管の分布が豊富なために出血が多い、歯を抜いた穴から感染を起こしやすい、痛みから結局食餌がとれないなどの欠点があるため、治療の選択が限られます。
基本的には膿瘍を摘出したり、切開・洗浄と抗生物質の投与を中心とした治療が行われます。
しかし完治するには長期間に渡ることもあり、また膿の貯留を繰り返してしまうこともあるとても大変な病気です。

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写真4:頭部のレントゲン写真
歯の根元(根尖)が、眼や下顎骨に向かって伸び骨を押し上げている

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写真5:歯の疾患より引き起こされた下顎の膿瘍

◇歯の疾患の予防について◇

このように歯の咬みあわせが悪い不正咬合は、結果的に様々な病態を作り上げます。
たかが不正咬合といって甘くみてはいけません。
ウサギはものを食べるとき、モグモグと咀嚼することによって歯と歯が擦り合わされ、歯を削っています。
ですから、ウサギが何回も咀嚼を行えるような食餌を与えることが大切です。
勘違いしていけないことに、「硬いものを食べる=歯が伸びるのを防ぐ」というイメージがありますが、実際には、硬いものによって歯が削れるというのではなく、上の歯と下の歯が擦れあう事で歯は磨耗します。
よって、いくら硬いペレットを食べたとしても、一回咬んで粉々に崩れてしまうようなペレットであればあまり意味がなく、歯の磨耗は期待できません。
ですから、繊維質が高く、何度も何度も咬まないと飲み込めないような繊維質の多い牧草やペレットがもっとも歯には適しています。
繊維分を多く含んでいる牧草や良質のペレットを中心とした食餌を心がけることが歯の疾患予防ではもっとも重要なことになります。
よく食べるからといって、炊いたお米やクッキーなどはあげてはいけません。
それらを与えると歯に悪いだけではなく、消化器に負担を与えたり、他の餌にくらべると格段においしいので牧草などを食べなくなってしまうからです。
とにかく丈夫な身体、健康な歯は正しい食餌管理にあります。

ウサギは犬・猫のような肉食動物ではありません。
一日でも食餌がとれないと身体に様々なダメージを与えてしまいますので、これらの特徴をよく理解して日々の健康管理を行ってください。
何日もほとんど食餌を食べていないウサギは、歯の処置を行うにも麻酔のリスクが高くなり、麻酔をかけられないこともあります。
「たかが歯の病気」ですが、うさぎの場合はこれで命を落としてしまうこともあります。
食欲が落ちてきたときは早めに動物病院に連れて行って適切な対処を行ってください。