ウサギは草食動物で自然界では食べられる側の動物で繊細で体力がない動物です。わんちゃん、ねこちゃんでは起こりえないことで命に係わることがあります。
当院は年間4500件以上のウサギ診療を行っています。その経験から得た事実として、ウサギを飼うにあたって、通院、診療にあたり以下に挙げる4点は特に注意が必要と考えています。飼い主様に事前に知ってご理解して頂きたいことお伝え致します。
- ウサギは自身の被毛や布などを食べて胃腸障害を起こし急変することがあります。
被毛や紙、布などを食べてそれが詰まったりして食欲が低下もしくは全く食べなくなります。完全に詰まっている場合、ウサギは動かなくなり、胃が拡張(急性胃拡張)し1日で急変することがあります。
消化できないものを食べないようにしてください。じっとうずくまって全く食べない場合は早めの受診をお願いします。また、換毛期にはなるべくブラッシングを行うようにしてください。
2.ウサギは暴れて大けが、骨折をすることがあり、背骨を損傷すると高い確率で死亡します。
ウサギの骨は硬く軽く割れやすく、一方、跳ねる脚力が強いために暴れたりすると自身の力で骨折することがあります。特に高齢のウサギは骨が大変もろくなっています。来院帰宅移動中のキャリーの中やご自宅での投薬、驚いたなどしてケージ内でも暴れると骨折をすることが起こりえますので気を付けてください。
院内での爪切りや耳掃除、検査治療中に暴れて骨折をすることがあります。スタッフ一同、扱いには充分気を付けておりますが(タオルで包んだり、落下する可能性がある子は診察台ではなく床で行います)、気を付けていてもウサギの不測想定外の動きによって事故が起きる可能性がありますのでご理解下さい。
背骨を横から見たレントゲン写真。背骨と背骨の間が脱臼をしてずれています。
3.ウサギの歯は、前歯も奥歯も伸び続けます。
伸びる方向によって、口腔内(舌や頬の内側)を傷つけ、痛みから食欲が無くなることがあります。モゴモゴしたり、よだれが出たり、食べたそうにしているが食べないなどの状態が見られます。普段から食べる量や、食べ方をよく観察して、いつもと異なる様子を早く見つけてあげて下さい。
治療は伸びた歯を削ったり切ったりすることです。前歯は麻酔無しで切れますが、奥歯は、状況によって全身麻酔をかけて削る必要があります。無麻酔か全身麻酔下で処置を行うかはウサギの健康状態、ウサギの性格(暴れやすかったり、観察時にモゴモゴの強弱)、歯の伸びている状況によって判断、ご相談します。麻酔の場合は事前に血液検査などが必要になることがあります。予防には牧草を食べることですが、与えていても先天的な理由で発症することがあります。
4.雌のウサギは中年齢以降、高い確率で子宮がんになります。
ウサギの雌はデータ上、5歳以上になると50%、10歳以上で90%の割合で子宮の病気にかかることが知られています。初期症状はなく、健診のレントゲンで偶然みつかることもあります。進行すると血尿が出ることから判明することがあります。治療は手術で腫瘍化した子宮を摘出します。
症状なしに食欲低下で来院時にすでに転移をして手遅れのケースも多々あります。血尿が出たら早めの受診をお願いします。この病気は避妊手術を行うことで予防することが可能です。何歳までにしなければならない、ということはありませんので気になる方は獣医師に相談してみてください。