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田園調布動物病院

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カエルの病気・1

カエルをはじめとする両生爬虫類は、自らの病気をあまり目立った形で症状として表さない場合が多い動物です。また症状が現れたときにはもうすでにかなり病状が進行しており、治療を試みてもその甲斐もなく死んでしまうことも少なくありません。カエルというとても環境の変化に弱い繊細な生き物は一度病気にかかると回復するだけの体力がないこともその原因として挙げられます。病気になってからあわてるのではなく、日頃から病気にさせないように心がけて管理をしていかなければなりません。


■細菌感染症(レッドレッグ)

様々な細菌の感染によって引き起こされる病気で、湿度の高い環境に生活しているカエルでは、もっとも頻繁に起こしやすい病気の一つです。全身的に細菌感染を起こし、四肢や腹部が赤くただれたりする症状を特に赤肢病、といいます。別名レッドレッグともよばれており、進行すると潰瘍を形成して出血することもあります(下写真)。

【症状】

身体が赤くなる以外にも食欲不振、腹水、四肢の浮腫、角膜炎、身体の皮膚の剥離が見られる場合があります。放っておくと全身に菌がまわり敗血症を引き起こし短期間のうちに死亡してしまいます。

【原因】

輸送直後の個体や不衛生な環境、飼育ケージの変化などのストレス、外傷に引き続いて発症しやすい傾向があります。エロモナス属、シュードモナス属、フラボバクテリウム属などの細菌によって引き起こされることがわかっています。中には伝染力の強いものもあり、これらの症状が見られた場合、速やかにその個体を別のケージに移します。

【治療】

感染したカエルを隔離したのち、清潔をたもち、病原菌に感受性のある抗生物質などの投与、薬浴を行うのが確実です。潰瘍を起こした皮膚へのダメージは、体液を失い脱水するので両生類用リンゲル液などで体液を補う必要があります。

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輸送ストレスから、全身性細菌感染を起こしたジャイアントネコメガエル

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不適切な飼育管理により発生したツノガエルのレッドレッグ

■消化管内異物

カエルは、餌を食べるときに誤って床材などの異物を一緒にたべてしまうことがよくあります。多少であれば問題なく排出されるのですが、継続的に誤飲したり消化管を通過できないほどの大きなものを食べたりすると腸閉塞を起こすことがあります。

【症状】

食欲不振や腹部が膨れてくる、急に元気がなくなるといった症状を示します。

【原因】

貪欲なツノガエルやウシガエルバジェットガエルでは床材に用いている砂利や水苔などの異物を餌を食べるときに一緒に異物を飲み込んでしまうことがあげられます。また、マウスの毛は消化できないので胃の中に停滞して毛玉を形成してそれが原因で腸閉塞を起こすことも知られています。

【治療】

日常から誤って口に入れてしまわないように飼育環境を整えます。また給餌をピンセットから上手く与えることでかなり予防できます。飲み込んですぐであれば、催吐薬などを用いて吐き出させたり、麻酔をかけて口からピンセットや鉗子などを用いて取り出すことができます。
また消化管の異物は外科的に摘出したり、消化管内を滑らかにさせる薬を用いマッサージを併用して外に出すことも可能です。

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床材を飲み込んだベルツノガエル

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ビー球6個を飲み込んだバジェットガエル


■代謝性骨疾患

代謝性骨疾患は、英語のMetabolic Bone Diseaseの頭文字をとってMBDとも呼ばれています。骨を形成するうえで重要な役目を働く、カルシウム、リン、ビタミン、紫外線などの過不足によって骨の成長異常や低カルシウム血症を起こし骨が溶け出すといったことを引き起こします。若い個体で起きるものをクル病、成熟してから発生するものを骨粗しょう症と言います。
特に、ツノガエルやイエアメガエルなど幼体から飼育する際に十分にカルシウムを与えていない場合に、成長に伴って骨の形成に摂取するカルシウムが追いつかないことが大きな要因となります。
予防には特に幼体の時にはカルシウム、ビタミンなどを餌に毎回つけることが大切です。

【症状】

初期ではスムーズな動きができなくなってしまったり、四肢の骨が曲がってきたり、下顎の骨が柔らかくなってきたりします。進行すると上手く体を動かせなくなってしまうので、餌を採ることができず徐々に衰弱していって死んでしまいます。また血液の中のカルシウムが減ってくると痙攣を起こすこともあります。

【原因】

成長期のカエルに不適切な食餌を与え続けると発症します。リンが高くカルシウム含有率の低いコオロギやミールワームを多く与えているとよくみられます。また昼行性のカエルに中波長の紫外線をあてないとうまくカルシウムを吸収できないこともあります。

【治療】

ミールワームやコオロギを与える際にはカルシウム、ビタミンを含む総合栄養剤をふりかけて与えるようにします。また爬虫両生類用に販売されている弱い紫外線を含む蛍光灯を点けます。病気が進行した場合は、完全に治癒させるのは難しい病気です。カルシウム、ビタミンDの注射を打つ場合もあり、獣医師の指示を仰ぎます。

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背骨の変形を起こしたベルツノガエル

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顎骨の変形を起こしたツノガエル


■脱腸

飼育されていカエルのお尻からピンク色の塊が飛びだすことがあります。お尻からなにが出てきたかとびっくりすることも多い様です。脱腸とは腸が反転して出てきてしまうことですが、総排泄腔の粘膜や膀胱までもが出てきてしまうこともあります。また重責を起こして出てくることもあり、ただの脱腸か重責かを見極め、治療を行います。

【症状】

総排泄腔から腸や膀胱などが出てくるのが確認できます。これらが出てきてしまうとうまく排便、排尿ができなくなってしまうため放置しておくと死んでしまいます。

【原因】

下痢や消化不良、肥満などの要因が絡んで脱腸を引き起こします。また、メスのカエルに多いとも言われています。少しの脱出でも総排泄腔に違和感を与えるので、さらに力んでしまい、ますます進行させてしまいます。また脱出してしまうと腸にうっ血が起き腫れてしまので収納が困難になっていきます。

【治療】

総排泄孔から少しでも腸が脱出したらあわてず、湿らせた綿棒などでやさしく元へ戻すようにします。脱出が高度になってしまったり、戻してもすぐに出てきてしまうようであれば、自分で元に戻すのは難しいので、乾燥しないように湿らないように保って獣医師に相談します。総排泄腔周囲の筋肉が弛緩してしまうと、元に戻してもすぐに脱出してしまうので、総排泄腔周囲の皮膚を切り取って形成を行う場合もあります。

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肥満したツリーフロッグに比較的よくみられる脱腸

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腸重責を引き起こしたベルツノガエル


■寄生虫感染症

寄生虫は野生からの個体であればほぼ100パーセント近く感染していると考えてよいでしょう。寄生虫のなかにもいろいろな種類があり線虫(いわゆる回虫類)、条虫類(いわゆるサナダムシ)、原虫類(トリコモナスやアメーバ類)などがあります。カエルに対して悪さをはたらくものやほとんど無害であるものまで様々です。

【症状】

寄生虫によって症状も異なります。いくら食べても太らない、下痢をする、なんとなく調子が悪い、皮下に線虫が見えるなどの症状を示します。ただし、健康な個体で感染している寄生虫の数が少ない場合には明らかな症状を示さないことがほとんどです。

【原因】

野生の個体であれば、現地で食べている餌や環境中から寄生虫に感染します。輸送や飼育によるストレスによって免疫力が低下したときに体内で増殖してしまいます。

【治療】

野生採集個体を飼育するのであれば、健康な時を見はからって検便を行い、感染している寄生虫を検査し、それにあった駆虫薬を投薬しておくと安心でしょう。
体重や健康状態にあった量の駆虫薬を与えなければ意味がありません。少ない投薬量であれば寄生虫は死にませんし、逆に投薬量が多いと肝臓や腎臓に負担をかけ副作用が出ることがあります。体内で維持ができないほどの数に寄生虫が増えてしまうと体が負けてしまいます。駆虫には経験の積んだ獣医師のもとで行うのが安全です。

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大腿部の潰瘍より条虫を吊り出す(イエアメガエル)

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野生採集個体のカエルに多い糞線虫(ワイルドのクランウェルツノガエルより)