■眼の疾患
カエルの眼は大きく、外側に大きく張り出しています。このような特徴は、カエルがかなりの部分で視覚に頼って生活していることを表しています。一方、この大きな眼はジャンプしたときや暴れたときに傷を負ってしまうことがあります。角膜に障害がでると、視力が低下し餌を認知できず、食欲不振になり死んでしまうこともあります。
【症状】
一般に、眼が白くなってしまいます。眼の表面が白くなってしまうと、曇りガラスかざしたような視界になるため、視力が低下し、動かなくなってしまったり餌を食べられなくなってしまいます。
【原因】
何か外傷によって角膜を傷つけてしまったり、栄養性の代謝障害でも眼の病気が発症します。角膜にコレステロールなどの脂質が沈着して白くなるケースをもあり、外傷性、細菌や真菌の感染による角膜炎と鑑別する必要があります。
【治療】
原因によってその治療法は変わってきます。細菌や真菌の感染によって起こっているのであれば、それに感受性のある抗菌剤点眼薬を用いて治療します。栄養の代謝障害によるものでは、餌の改善を行ったり、角膜に沈着した脂質を外科的に剥離するケースもあります。
角膜脂質症のモリアオガエル
前房内の出血を示すベルツノガエル
■脱水症
両生類の皮膚は、水分を吸収しやすい反面、皮膚から水分の蒸散も簡単に起きてしまいます。自然界で砂漠に住んでいる種であっても水を切らすと飼育下ではすぐに脱水症状を起こしてしまう種類も多くいます。飼育下で死んでしまうカエルの多くは、この脱水で死亡してしまうケースが多くあります。
【症状】
皮膚のみずみずしさがなくなり、しわが寄ってしまいます。また動きが緩慢になり、すぐに対処しないと死んでしまいます。
【原因】
飼育ケージから脱走して発見するのに時間を要したり、うっかりケージ内の水容器の水を切らしてしまったことなどにより発生します。また、拒食が続いたり、他の病気をで体調を崩していたりする時など、カエル自身が動かなくなってしまい水場まで動かなくなってしまうことなどでも起きます。様々な病気に続いて二次的に脱水を起こします。
【治療】
脱水に気づいたらすぐに温度を合わせた水に漬けるようにします。感染症を伴っている場合は、抗生物質、抗菌剤を溶かした溶液に入れることもあります。重症の場合は、皮膚からの吸収だけでは間に合わないので、注射を用いて両生類専用リンゲル液を補うこともあります。
脱水症状を示すソバージュネコメガエル
■膀胱結石
ソバージュネコメガエルやアフリカに生息するハイイロモリガエルなど乾燥地帯に住むカエルは、尿を爬虫類と同じ尿酸で排泄します。尿酸は半固体ですが膀胱内で固まってしまって膀胱結石を作ってしまうことがあります。
【症状】
膀胱結石は、膀胱内である程度の大きさにまでならないと症状を示さないことが多いようです。したがって食欲不振、元気消失などの症状を表したときには、すでに排泄できないくらいに大きくなっていることがあります。また結石が大きくなると下腹部を触ると堅いしこりを確認することもできます。
【原因】
尿酸は、蛋白質などの窒素化合物が体内で代謝された時にでる残りカスにあたります。蛋白質の摂取量が多かったり、脱水を起こして尿が濃縮されると結石ができやすくなると考えられています。
【治療】
結石は骨盤を通過する大きさであれば出ることもありますが、それ以上になると手術して取り出す以外に方法はありません。したがって予防が何より大切です。いくら乾燥地帯に住んでいるからと言って水分はいつでも摂取できるようにしておかなければなりません。脱水を起こすと結石ができやすくなってしまうからです。また本来昆虫などを主に食べているのであれば、マウスなどの高蛋白の餌も控えた方が良いでしょう。高蛋白も結石の原因となります。
開腹手術によって摘出した膀胱結石
■皮膚の疾患
カエルの皮膚は分泌腺の働きにより、常に湿り気を維持しています。また、皮膚は薄く水分の吸収などを行っている非常に重要な組織ですが、繊細で怪我や抵抗力の低下によって容易にバクテリアの感染を引き起こします。
【症状】
皮膚が赤くなったり、潰瘍ができたり、また何かできもののようなコブができたりします。そして、放っておくと血液を介して全身に回り、皮下出血などを引き起こし、いわゆるレッドレッグに移行することもあります。
【原因】
細菌や真菌(カビ)、ウイルス、寄生虫などによって引き起こされます。主に、輸送や環境の変化、過剰なスキンシップなどによるストレスなどによる免疫力の低下により感染が成立し、皮膚病変を形成します。
【治療】
皮膚病になっている原因を調べ、それに対する治療をします。原因により、抗生物質、抗真菌薬、抗ウイルス薬、消毒薬の選択を行い、全身的、局所的に投与します。また、皮膚にダメージがあると体液の喪失を伴うのでリンゲル液などを投与し脱水に移行するのを予防します。
化膿性の細菌性皮膚炎(ベルツノガエル)
皮膚の潰瘍を起こしたイエアメガエル
■外傷
カエルの皮膚はとてもデリケートなので、外部からの物理的な力によって簡単に損傷してしまいます。カエルの皮膚は再生力が強いので直ぐに修復されますが、細菌の感染を受けると傷は広がっていってしまい全身性の菌血症に移行してしまうこともあります。日常からケガを負わないように注意しなければなりません。
【症状】
身体に損傷が見られます。
【原因】
アカガエル科のカエルやツリーフロッグなど飼育して間もないカエルは環境になれていないと激しく跳ねたり、脱走を試みるようとします。その時に外傷を負ってしまうことが非常に多く見られます。そのほかケージ内の事故によって骨折をしてしまうこともよく起きます。
【治療】
小さな傷であれば飼育環境を清潔に保つことで治ってしまいます。傷口の乾燥をつとめるために抗生物質のパウダーや軟膏、消毒薬を塗布したり、細菌の感染を受けないように抗生物質の全身的な投与を行ないます。骨折であれば、ギプスなどの外固定やピンを使っての整復を行います。
輸送によって鼻先に擦過症を起こしたミツヅノコノハガエル
車に引かれてしまったヒキガエルの左肢