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田園調布動物病院

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カエル -総論-

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最近、ペットとしてカエルを飼育するということが一般的になってきているようです。黒めがちな大きな瞳やいつも笑っているような顔つきなどから “いやし系ペット”としても注目を集めています。庭先で見つけたアマガエルを家へ連れて帰ってしまったり、ペットショップで目と目があって思わず購入してしまったりと、ふとした出会いからカエルに興味を持ち、カエルを飼育はじめるひとも多いようです。。カエルは犬や猫などのペットと違いスキンシップがはかれる動物ではありません。一方的な愛情の押しつけや飼育者のちょっとした勘違いやミスで簡単に死んでしまうこともあります。正しい飼育と管理で末永く付き合っていってあげたいものです。


★カエルの分類

カエルは動物分類学的には、脊椎動物門、両生綱、無尾目に属しています。カエルは、他の両生類と区別する方法として、成体は尾を持っておらず、また多くの種類で跳躍することができます。そのため、体は短縮して背骨を構成する骨の数が他の両生類とくらべてはるかに少ないことが特徴的です。
カエルの中でも、科レベルの系統関係は、現在でも混沌としており、分類する方法によって様々な見解があり今だ学者の間で議論されています。
カエルの分類は古くから形態による分類が行われてきました。分類は主に、幼生(オタマジャクシ)の細かい特徴、化石の証拠、成体の胸帯や脊椎の構造などをもとにしています。また今日ではDNA遺伝子を調べる分子生物学的な見知からの研究も進んできています。
世界で知られている約4000種のカエルは現生種として24科341属に分類されています。その中でも大きなグループは、ミナミガエル科約960種、ヒキガエル科約400種、アマガエル科約750種、アカガエル科約625種、アオガエル科約200種、ジムグリガエル科約320種で世界各地に生息しています。ミナミガエル科はアメリカ大陸のみの分布し、アオガエルの仲間は、アメリカ大陸とオーストラリアには分布していません。


★カエルとは?

両生類に共通して言えることは、一部の例外を除き、体を覆っている皮膚は柔らかく、たくさんの粘液腺があり、いつも湿っています。この皮膚は浸透性が高く、皮膚を通じて水分を吸収したり、酸素や二酸化炭素のガス交換をすることができます。
また、卵の構造が爬虫類と両生類では決定的に異なり、爬虫類の卵は角質の殻をもった卵であるのに対し、両生類のそれは、ゼラチン質に覆われ卵殻をもっていません。そのため、産卵場所の多くは、水中もしくは湿った場所で行われ、産まれたきた幼生は鰓呼吸を行います。カエルの場合、産まれてきた幼生は、オタマジャクシと呼ばれています。オタマジャクシからカエルになるまでの変態の過程は、エラ呼吸から肺呼吸、四肢の足が出てきて尻尾が吸収されるなど両生類の中でも特に劇的な身体の変化が行われます。
両生類の中でも、イモリやサンショウウオは、気温が低く湿度の高い地域にしか生息していませんが、カエルはあらゆる環境に適応しており、南極大陸を除いて世界中の大陸に生息しています。世界的にみるとその多くが熱帯雨林に生息していますが、一部には、砂漠に適応したものもいます。また生活様式は幅広く、樹上、陸上、水中、地中とどのような場所でもみることができます。


★カエルと人とのおつき合い

○日本人とカエル

カエルと日本人の関係をひもとくと縄文時代には、もうすでにカエルは人との関わりを持っていたようです。というのも縄文人が作った縄文式土器にはカエルの姿が描かれています。身近な食料としたり、跳ね回る姿が面白いので縄文時代の子どもの達のおもちゃになっていたのかも知れません。
奈良時代初期に書かれた日本最古の神話・歴史書の古事記にもカエルがでてきます。その当時ヒキガエルは「タニグク」と呼ばれており、水田の神の使者と信じられていました。
また、俳人松尾芭蕉の「古池や蛙(かわづ)飛びこむ水の音」、詩人小林一茶の「痩蛙まけるな一茶是に有り」という句は我々日本人にとってあまりに有名です。
日本古来の歌舞伎の中でもヒキガエルのまたがり、妖術を使いこなし、変幻自在に立ち回るシーンを見ることが出来ます。
芸術の分野ではカエルの登場する絵画としては12世紀ごろに書かれた『鳥獣戯画』が有名です。『鳥獣戯画』は甲乙丙丁の4巻の絵巻からなりますが、その中の甲の巻でカエルが主要な役割を果たしています。
一方、最近ではカエルをモチーフにした関連グッズの出現も目を見張るものがあります。日常生活の中のいたるところでカエルをかたどったヌイグルミ、雑貨類のキャラクター、郷土品など、カエルを見ることができます。
このように日本人は文化的な活動の方面でも古くからカエルと密接して生活してきたといえそうです。(写真かイラスト・グッズ、キャラクターの絵)

○食用としてのカエル

先ほども縄文式土器にカエルが描かれていたと書きましたが、おそらく当時から貴重なタンパク源としてカエルは人に食べられていたと考えられます。
現在日本各地で帰化しているウシガエルはもともと食用して約80年前にアメリカから雄14匹雌4匹が輸入され帰化したのものが始まりです。農家の収入をあげる副業としてウシガエルの養殖計画は国ぐるみで進行し、一時日本から輸出される冷凍水産物の中でマグロ、カジキに次ぐ第3位の成績をおさめたこともありました。当時のカエル人気は凄まじく大阪にカエル専門料理店ができたほどと伝えられています。
今でも世界各地で食用にされています。海外を旅行した方は、経験があると思いますが、中国や台湾では普通に食べることができます。南アメリカでは、日本でペットとして人気のあるナンベイウシガエルをマウンテンチキンと呼び現地の人々は好んで食べています。

○実験動物としてのカエル

またカエルは古くから実験動物として扱われてきました。17世紀にはカエルから足だけを切り取り、それを電極につないで電気を通す有名な実験が行われました。弱い電気を通したカエルの足は、頭や胴体がないにも関わらず、まるで生きているかのように足が収縮しました。
また現在ではカエルの卵を用いて、その発生の初期段階に卵や胚に外部からの物理的操作を加え、その結果から発生がどのような機構から起こりうるかを調べる実験発生学が盛んに行われています。
一方私達の身近なところでは学校で動物の解剖や体の仕組みを知るためにカエルの解剖を行ったり、また生物の教科書には必ずと言っていいほど、脊椎動物の発生過程のモデルにカエルの卵割が使ってあります。

○環境指標としてのカエル

このように今日、私達はカエルから多くの恩恵を受けてきています。しかしながらその一方で毎年多くのカエル達が絶滅に追いやられているのも事実です。そしてその原因の多くが人間の活動によって引き起こされる環境破壊の影響に他なりません。多くのカエル達は熱帯雨林をはじめとする自然の多く残っているところに生息しています。その破壊は、建物を建てるための土地の開拓、農作物の為の焼き畑、ダム、ゴルフ場の建設、酸性雨、農薬の影響などさまざまな活動によって引き起こされています。それらがカエルに与える影響は計り知れませんカエルが住めなくなってしまうこと自体、将来人間にとっても決して住みやすい地球とはいえないかもしれません。