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田園調布動物病院

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プレーリードッグの病気

プレーリードッグは、本来運動量の多い動物ですが、飼育下ではなかなか適切な運動量を得ることが難しくどうしても肥満傾向になってしまいます。またストレスなどにより、ケージに噛みついたり、ケージをよじ登ったりして歯牙疾患を起こしてしまったり、怪我を負ってしまうことが多い動物ですので、飼育環境には大事故につながらないように十分注意しましょう。


■歯牙の疾患

他のげっ歯類と同じように、切歯(前歯)に不正咬合がみられるケースが多くあります。ケージを噛んだり、ぶつけたりするして破折してしまうことが主な原因です。いったん不正咬合に陥ると、かみ合わせが悪くなるため、うまく歯の摩耗が起きないので、上顎切歯は内側に、下顎切歯は外側にどんどん伸びていってしまい、うまく餌を食べることが出来なくなってしまいます。
またケージを噛む悪癖による上顎切歯への慢性的な物理刺激は、歯根部の変形を引き起こし、歯根部の石灰化を引き起こし歯の成長に障害を与えます。
そして、その歯根部が大きくお団子のようになり、鼻腔を圧迫し、呼吸ができなくなってしまうことがあります。 この切歯の歯根が石灰化し大きくなることを、歯牙腫(Odontoma)といい、愛好家の中では、オドントーマ、オダントマと呼ばれプレーリードッグの難病のひとつとされています。
この病気は、風邪やアレルギー性鼻炎などの呼吸器の疾患と間違われ診断されてしまうケースが非常に多く見られます。
初期の症状としては、くしゃみ、鼻水、呼吸がおかしい、苦しそう、鼻を頻繁にいじる、などが現れます。そのような症状が見られたら頭部のレントゲン検査を行い歯牙腫(オドントーマ・オダントマ)を疑ってかからなければいけません。
さらに、切歯の歯根は長く、眼窩に近接しているため、ひどくなると眼球を押し上げたり鼻腔内へ炎症が波及し鼻汁を呈することもあります。
治療は、消炎剤、抗生物質の投与などを行いますが、根本的な治療にはなりません。 当院では、切歯を抜歯する手術(下写真)、眉間の穴を開ける造窓手術(下写真)を行っていますが、その治療方法はいまだ獣医学の中では充分に確立されたものではありません。 この歯牙腫の治療には、プレーリードッグに詳しい獣医師とよく相談し、二人三脚で治療に望む必要があります。

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歯牙腫のレントゲン像
切歯の外縁、歯根部によって副鼻腔の狭窄を引き起こし、呼吸困難を呈する

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抜歯した切歯
外縁部、歯根部がデコボコに増殖している

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造窓手術によって新たに呼吸孔を開けた症例
症例によって、抜歯術や造窓手術を行うか十分に検討する必要がある。


■消化器の疾患

プレーリードッグはその性質から何でも噛んで遊ぶという性質をもっています。それら噛み癖によって、誤って異物を飲み込んでしまって腸閉塞を起こしてしまう事故が多くあります。
また飼養管理の過ちによる、たとえば、ヒマワリの種やおやつ類などの多給により、脂質やカロリー過剰摂取、運動不足により肥満を引き起こし、結果、脂肪肝に陥っている個体も少なくありません。脂肪肝になると食欲低下、元気消失などが見られ、餌を食べれなくなって急激にやせてくると、さらに脂肪肝を助長することもあり、肥満気味のプレーリードッグは注意が必要です。
また食物中の繊維が不足すると,盲腸内細菌の異常を招いて、腸毒素血症になることもあります。

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レントゲン写真・横からの像        レントゲン写真・上からの像
ピーナッツの多給により盲腸便秘を引き起こしたレントゲン写真。
腹部が異常に 膨れている。


■皮膚の疾患

皮膚疾患は、湿度の高すぎるなどの不適切な環境、温度、照明、食餌などの要因が大きく関係しているます。細菌性皮膚炎や皮下膿瘍は、ケージ内での、損傷や同居動物のケンカなどによる咬傷で好発します。原因菌としては、ブドウ球菌、連鎖球菌、パスツレラなどの常在菌であることが多いようです。
まれに皮膚糸状菌症がみられることがあります。皮膚の免疫が低下した個体や幼若齢の個体によくみられます。
外部寄生虫疾患として、野生個体も多いことからシラミが寄生している個体が多いと
言われています。


■泌尿器の疾患

プレーリードッグの泌尿器の疾患は、加齢とともにみられるようになります。
細菌性の膀胱炎は比較的おおくみられ、オスではそれに伴う尿路閉塞などの合併症がおきやすいので注意が必要です。尿道が詰まってしまうと、尿が出ず、尿毒症を引き起こし、最終的には死んでしまう怖い病気です。尿の出が悪い、赤いおしっこが出る、頻尿である、などの症状が出たら、様子をあまり見ずすぐに獣医師に相談すべき気です。
泌尿器の疾患の主な原因は、免疫力の低下、栄養素の不均衡、細菌感染などが関係していると考えられています。また腎不全を起こすことが知られていますが、不適切な食餌が原因として疑われてはいます。しかし詳しい因果関係は判っていません。


■外傷(自咬症)

プレーリードッグは元来、広い草原に穴を掘って生活している動物です。したがって飼育下でも、穴を掘ろうとしてケージを前足でガリガリと掘る行動をよくします。その際に爪が伸びているとスノコなどにひっかっけてしまい、爪を折ってしまうことがよくあります。爪の損傷自体は大したことがなくても、もともとリス科の動物は外傷した部分を自分でガチガチ咬んでしまい、さらにひどい状態にしてしまうことがあります。この行為を自咬症を呼びます。自咬症を防ぐには、咬まないように包帯を巻いたり、首に輪を巻いたりしますが、力のあるプレーリードッグにはとても難しい処置です。傷口を消毒や化膿止めを用いた治療とともに、咬まぬよう最大限注意しなければなりません。

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自咬症
爪の損傷から自ら咬み壊し、外傷をさらにひどいものとしている。