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田園調布動物病院

お知らせ

フェレットの病気(耳ダニ症・犬ジステンパー感染症・インフルエンザ感染症・エストロゲン中毒)

飼育している動物を病気にさせたくないのは飼い主さんだれもの願いです。フェレットは家畜化されての歴史が、他のエキゾチックアニマルと比べてとても古く、また多くの疾患が知られています。リンパ腫やインスリノーマなどの腫瘍や、ホルモンバランスが崩れる内分泌疾患などは比べても比較的遭遇する機会の多いといえます。
フェレットは比較的体力もあり、慢性消耗性疾患には強い一面がありますが、それでも体が小さい分、病気が進行してからの回復はなかなは難しい動物です。したがって、体調になにかおかしな変調がみられたら様子をあまり見ずに病院へと相談しましょう。




■耳ダニ症

犬や猫と同様にフェレットもミミヒゼンダニ(Otodectes cynotis)に感染します。特に若い個体に多く見られます。進行すると黒褐色の耳垢が溜まり、特異な匂いを発したり慢性的な外耳炎に移行します。ミミダニが感染している動物から直接接触によって感染するので、ペットショップなどからもらってきてしまう場合が多いようです。ダニの寄生により痒みが生じるため、耳を痒がるという主訴で来院することが多いです。耳垢にKOHを垂らして直接的に鏡検することによってダニを確認することができます。

【症状】

フェレットはもともと耳垢がたまりやすい動物ですが、このミミダニが感染すると痒みをともない、黒褐色の耳垢が溜まります。耳を掻いたり、頭を振ったりしはじめます。また頻繁に掻くために、耳の周りにかさぶたや耳血腫ができたり、二次感染によって炎症を起こし耳道を塞いでしまうこともあります。

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黒褐色の耳垢が溜まる

【治療】

殺ダニ剤の点耳や全身的に駆虫剤を投与して治療を行います。フェレットの耳は耳道が狭く、うまく薬が浸透しないこともあるので、点耳薬を投与する場合には投与前に耳垢など溜まった分泌物をきれいにクリーニングする必要があります。
 ダニは卵から成ダニになるまで約3週間かかり、そのあいだ治療を継続しなければならないこともあります。またフェレットを多頭飼育していたり、猫と同居しているフェレットの場合はその動物間での感染が起きるので、同時にダニの駆除をしなければなりません。


■犬ジステンパー感染症

パラミクソウイルス科のイヌジステンパーウイルスが原因で、感染するとほぼ100%死亡することが知られている恐ろしい感染症のひとつです。このウイルスはイヌ科はじめイタチ科、アライグマ科の動物の動物に感受性があります。ウイルスの伝播は、感染した動物からの飛沫感染を主として目やにや鼻汁、尿、糞便の直接的な接触によっても成立します。イヌジステンパーウイルスの潜伏期間は7~10日で、感染後7日目よりウイルスを排泄します。罹患したフェレットは、免疫抑制を起こし、細菌の二次感染を引き起こしその結果さまざまな呼吸器症状を引き起こします。

【症状】

7~10日の潜伏期間の後、食欲不振、結膜炎、粘液膿性分泌物が目や鼻から見られ、その時期に発熱を伴うこともあります。その後、二次感染により顎に水疱や発疹がみられ、肛門周囲や鼠蹊部にまで広がっていき、次第に眼瞼周囲、鼻鏡、顎、口唇に特徴的な茶色の痂皮が形成されます。また手足のパットの部分はイヌと同じように角化異常がみられ、ハードパットといわれる状態になります。これらの症状を経過した後、興奮、流涎や眼球震盪、運動失調などの中枢神経症状に移行しやがて死亡に至ります。

【治療】

残念ながらジステンパーに感染してしまったフェレットの有効な治療法は知られていません。二次感染を防ぐ意味で抗生剤の投与をしたり、補液などの対症療法を行います。症状がひどく苦しむ場合は、安楽死も選択肢のひとつとなります。予防は、ジステンパーワクチンの接種になりますが、
現在日本には、フェレットに認可されているワクチンがありません。したがって替わりに犬用のワクチンを打つことがなされています。種類の多い混合ワクチンは理想的ではありませんが、鶏卵組織で培養された弱毒ワクチンであれば危険性が低いとされています。


■インフルエンザ感染症

フェレットは古くから実験動物として扱われてきたと以前にも書きましたが、その実験のひとつとしてこのインフルエンザの感染実験があります。人のインフルエンザのいくつかのタイプでは、フェレットに感染することが知られています。飼育しているフェレットで感染した多くは、やはり飼い主さんなど人から染されるケースが多いようです。
インフルエンザに感染したフェレット、人の鼻汁や目やになどの直接ないし飛沫による空気感染を起こします。呼吸器症状が主体ですが、ひどくなると消化器症状を起こすこともあり、とくに若い個体のフェレットでは命取りになる場合あります。

【症状】

ウイルスに感染した場合2日ほどで諸症状が見られます。くしゃみ、鼻水、目やに等の呼吸器症状をはじめ、食欲不振、下痢、脱水を呈することもあります。また感染初期では発熱がみられることもあります。通常、大人のフェレットであれば感染後1~2週間で回復することが多いのですが、若い個体や新生児では二次的な感染を伴って肺炎などを起こし死亡することもあります。

【治療】

補助的に水分補給や症状軽減のため抗ヒスタミンなどの対症療法を行い、二次感染を防ぐ意味で抗生物質などを投与します。成体のフェレットであれば、1~2週間の間に抗体が産生されて自然に回復がみられます。


■エストロジェン中毒

この病気は、エストロジェン過剰症とかエストラスなどとも呼ばれ、ひどい場合には死亡することもあります。フェレットはもともと交尾排卵動物ですが、逆にこの交尾刺激がないと排卵が起きないため発情が持続します。発情中、卵巣から分泌させるエストロゲン(性ホルモン)は、発情期特有の身体的変化を引き起こすだけでなく、造血器である骨髄の機能を抑制するという働きを持っています。その結果、発情が長く続くと、エストロゲンが必要以上に分泌されることになり、その作用によって骨髄形成不全を引き起こします。そして白血球減少や血小板減少などの再生不良性の貧血を起こすことになります。

【症状】

臨床症状は多岐にわたります。元気消失、食欲不振をはじめ、尾部、腰部、体側の左右対称性の脱毛、外陰部の腫脹、粘液の分泌、それらによる会陰部、鼠蹊部の濡れが見られます。
また貧血のため、歯肉、結膜などの蒼白が認められ、ときに心雑音が聞こえることもあります。

【治療】

原因であるエストロジェンの分泌を押さえるために、通常は卵巣子宮摘出術を行います。また全身的な状態によっては体力的にそれらの手術が出来ない場合もあるので、発情を終了させるためにhCGなどのホルモンの注射をします。
また貧血や脱水、感染などが見られる場合には、点滴、抗生剤など必要に応じて支持療法を行い、貧血が回復するまでのあいだ長期にわたる看護を行う必要があります。近年販売されているフェレットはほとんどが避妊手術済みなのでこの心配はありませんが、中には、一部卵巣が残ってしまっていて発情を示すフェレットもいます。