受付時間
8:30-11:30
(9:00から診察開始)
15:30-18:30
(16:00から診察開始)
×

新規の受付は午前11:00、午後18:00まで
診療は午前9:00、午後16:00から
休診日:毎週木曜日午後、年末年始

お問い合わせはこちら

※最終受付時間:午前11:30 / 午後18:30

〒145-0071 東京都大田区田園調布2-1-3
アクセス情報 / E-MAIL

田園調布動物病院

お知らせ

犬の食物アレルギー(皮膚病)について

犬の皮膚疾患に悩んでいる方は沢山いらっしゃると思います。
なにをやっても再発を繰り返す、いつも痒がっている、というワンちゃん。
こんな子いませんか?

中でも飼い主さん自身が「フードが合わない、フードアレルギーではないか?」
と悩んでいる方はいらっしゃいませんか?
もしくは、どなたかに「それは食物アレルギーだから、このフードに変えないとダメなんじゃない。」
と言われた、そんな方はいらっしゃいませんか?

ちょっと検索エンジンで「犬・アレルギー・フード」と調べるだけで相当数の情報がヒットします。
それだけ、フードと皮膚病の関係に関心が高いのでしょう。

そこで、今回、この皮膚とフードの「食物アレルギー問題」。
現時点における獣医学観点からの最新情報をお伝えします。

その前にちょっと確認です。

  1. アレルギーの原因はフードだけではありません。
  2. 犬のアトピー性皮膚炎は比較的多いです!
    「アトピー性皮膚炎」と「食物アレルギー性皮膚炎」は違います。
    アトピー性皮膚炎の原因の多くは、環境中のホコリや花粉の場合がほとんどでです。
  3. 「食物アレルギー」と「食物不耐」は違います。
    食物不耐とは、例えば、大人になって牛乳飲んだら下痢をする。
    など、体に合わない(耐えられない)ことを言います。

勘違いしていませんか?

その1

「治りにくい」「もしくは繰り返す皮膚病」=フードによるもの(食餌アレルギー)と勝手に思いこんではいないでしょうか?

動物病院に来院する犬の多くは皮膚科、耳科系で来院します。

その皮膚、耳疾患の全症例において、
食物アレルギーによる皮膚疾患は全体のわずか数パーセントにすぎません。
逆にいえば、皮膚疾患の犬すべてのうち、フードの変更で皮膚がよくなる犬は、
わずか数パーセントしかいません。

犬の皮膚疾患の原因の多い順番として、
細菌、真菌による皮膚病、寄生虫(ノミ、ダニ)、アトピー性皮膚炎、
ホルモン性皮膚疾患、食物アレルギー、接触もしくは薬物アレルギー
というのが多くの皮膚科専門医の意見です。

あなたのワンちゃんは、
たまたまその数パーセントの珍しい皮膚病に罹ってしまったのでしょうか?
皮膚の悪さを全てにフードのせいにしていないでしょうか。

獣医学的にその皮膚の原因を診断したのでしょうか。
再発を繰り返す、治りにくい=全てアレルギーのせい、
と信じて疑っていませんでしょうか。

その2

「血液検査の結果次第で、それに合ったフードを食べたら、皮膚が良くなる」
と信じていないでしょうか?
血液検査でアレルギーの原因が明確に判ると思ってませんか?

「うちの子、血液検査で鳥肉と豚肉と牛肉がダメってでたの。

だから、ラムをベースにしたドッグフードにしています。でも、皮膚がいっこうに良くなりません」
「血液検査を行って、そのアレルギーの成分が入っていない対応フードにしたけれど良くならない」

なぜでしょうか?
その理由は簡単です。食物アレルギーではないからです。

よく行われるアレルギー血液検査は体内の中にある抗原に対する抗体
(抗体IgG,IgEの値)の数値を単に計っているにすぎません。

すなわち、血液検査によって,その子の体内に食品に対する抗体がいっぱいあるのは判ります。
しかし、その数字だけでは、その成分が本当に皮膚に悪影響を及ぼしているのか不明なのです。

血液検査のみで本当に食物アレルギーの診断と治療方針が判るならこんなに簡単なことはありません。
本当にそうであったら、
皮膚病で来院した犬に対して世界中の獣医師が血液検査を行うはずです。
実際にはそうではありません。

じゃあ、そんなこと言って現実問題、どーすればいいの、ということになります。
現在の獣医学において根拠のある方法をお伝えします。

まず、食物アレルギーを疑う前に、それ以外の皮膚病を候補から無くします(除外診断)。
典型的な細菌感染ではないか、ノミダニはいないか、カビ(真菌)ではないか、ホルモン失調はないか、アトピーはないかなどなど・・・。
それらの皮膚病がすべてNOとなれば、食物アレルギーを疑います。
疑ったなら、フードを変更して試験を行います。

使うフードは蛋白質を加水分解した専用フード(アレルギー除去食)を6週間与えます
除去食試験)。
その間は一切ほかのものを与えてはいけません。
もちろん、おやつ関係もダメですよ。
もし、そのアレルギー除去食のみで、皮膚が良くなったら、
食物アレルギーが疑われます(この段階でもまだ疑い、ですが)。

良くなったら、もう一度、以前に与えていたフードに戻してみます(誘発試験)。
そして、また以前と同様の皮膚病変が起きればその食物に対してのアレルギーである、
として診断が確定されます。

(厳密には、そのアレルギー除去食でも、アレルギーが出るワンちゃんがいると言われていますが、それとて本当にごくわずかです。そうなった時は、運が悪いと思って原因物質の特定は諦めてください)。

ちなみに、除去食は、普通のアレルギー対応フードより高価ですので、
6週間の試験にはそれなりにお金がかかります。
しかし、IgGやIgEを調べる血液検査も同じくらいしますので、
最低限の費用で食物アレルギーかどうかを確定した方は、
アレルギー除去食試験を試すことをお勧めします。

フードと皮膚の関係性(食物アレルギー)で現在判っていることを書きました。
ですので、
「このフードで簡単に皮膚がすぐに良くなる」とか
「この検査すれば、アレルギーかどうか簡単に判る」
という話には落とし穴があります。
皮膚病に関して、「簡単に」「すぐに良くなる」という言葉にはありませんので用心してください。

さらに余談ですが・・・・。

アトピー性皮膚炎は、食物アレルギーと比較しても比較的多い皮膚病で、しばしばみられます。
アトピー性皮膚炎の診断基準は

Dr.Willemseが提案した「犬のアトピーの定義」というものがあります。
各定義のうち少なくとも3項目ずつ充たす。

大定義

  • 掻痒(かゆみ)
  • 顔面および/あるいは肢端(足の先)の発症
  • 足根の屈筋面あるいは手根の伸筋面の苔癬化(象の皮膚のようにゴワゴワしている)
  • 慢性あるいは慢性再発性(何度も繰り返し発症する)の皮膚炎
  • アトピーの家族歴
  • 好発犬種(ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、柴犬、ラブラドール・レトリーバー、シーズーなど)

小定義

  • 3歳齢以下の発症
  • 顔面の紅斑と口唇炎
  • 細菌性結膜炎
  • 表在性ブドウ球菌性膿皮症
  • 多汗症
  • 吸引アレルゲンへの皮内反応試験陽性
  • 抗原特異的IgGの上昇
  • 抗原特異的IgEの上昇

おわりに。

最初にお見せした写真は、フレンチブルちゃんの皮膚病です。
食物性のアレルギーではありません。
ブドウ球菌による膿皮症という、
夏場の犬ではもっともよくみられる皮膚病です。
もちろん、フードの変更では治りません。
ブドウ球菌を退治する抗生物質と皮膚を綺麗にするシャンプーで治ります。
ワンちゃんの皮膚疾患で悩んでいる方、ご相談ください。