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田園調布動物病院

お知らせ

チンチラの病気(歯・消化器・皮膚の疾患・熱中症)

実際に生じるチンチラの一般的な疾患の多くは、飼育管理に起因しています。
そのため、病気の予防には日ごろから正しい飼育環境の整備や正しい食餌が必要になります。
チンチラはその野生の中で生き抜く生存機構の一つとして、体調不良の姿をなるべく見せないようにする性質があります。
したがって病院を訪れたときには重篤な状態になっていることも少なくありません。
今回紹介するチンチラの病気は、比較的よく遭遇する疾患やチンチラ特有の病気を中心に紹介します。


■歯の疾患

チンチラの歯は、常生歯で歯根が開放しており一生伸び続けます。だいたい1年に約5~7センチの速さで伸びます。チンチラの歯は黄色いのが正常であり,逆に白い歯はビタミンA欠乏が疑われます。他のげっ歯類と同じように、不正咬合や根尖膿瘍などの歯科疾患も比較的遭遇する機会の多い病気です。歯科疾患は、飼い主さんが症状に気づいて病院を訪れる際には、すでに病状が進行していることが多いです。繊維の少ない食事を与えていることが大きな原因です。物理的な力によって切歯の向きが変わってしまってもこの病気は引き起こされます。


◆不正咬合

【原因】

チンチラの歯科疾患としては不正校合がもっとも多く,切歯(前歯)にも臼歯(奥歯)にも起こります。
臼歯の不正咬合に続いて切歯の過長が現れます。
下顎臼歯は内側に伸長し、舌の動きを制限したり潰瘍を引き起こします。上顎臼歯は外側へ伸長し、頬の粘膜を傷つけます。

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上顎臼歯が外側に伸び、頬粘膜に潰瘍を形成している。
食餌中の繊維質の不足や遺伝的要因が主な原因とされています。また、甘い物を多く与える虫歯(蝕歯)になることもあります。

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切歯の蝕歯。これから不正咬合に移行する。

【症状】

口腔内の違和感、痛みから食欲不振、ヨダレを流すことがみられます

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不正咬合によりヨダレを流している
また上顎臼歯の歯根が眼裔に向かって伸びるため涙が出るケースもしばしばあります。また下顎臼歯の歯根が下に向かって伸び、下顎骨に凹凸が触知されることもあります。本症が進むにつれて食物を選り好みするようになったり、柔らかいものを好んで食べるようになることもあります。
さらに膿瘍(下に記載あり)といって歯根部が感染を起すことにより膿が溜まり、腫れてくることもあります。

【治療】

切歯であれば、切歯の切断を行い、臼歯に異常が見られる場合では、麻酔をかけ削る必要があります。その後、食物繊維を多く含んだ食餌管理を行います。しかし、その処置を行ったところで、根治は難しく、定期的な口腔内の観察、歯の処置が必要です。


■消化器の疾患

消化器の疾患は、草食性であるウサギと同じくチンチラの病気の中でも、症例数の多い病気の一つです。腸内醗酵を行うため、消化器疾患の多くが給餌の内容や管理に起因します。急激な食事内容の変更や、粗悪な飼料の給餌などに充分注意しなければいけません。
また、ウサギやハムスターでも起こる、不適切な抗生物質の投与による腸性毒素血症にも注意が必要です。


◆胃腸のうっ滞・鼓腸症

【原因】

急激な食事内容の変更や水分のたくさん含んだ野菜や果物、マメ科植物を多く与えたときに起こしやすいようです、胃内容のうっ滞と細菌叢による発酵によって胃内にガスが異常に貯留することにより生じます。

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胃内にバリウムの停滞がみられ、消化管全体にわたりガスの貯留が見られる。
また胃内のある種の細菌の欠如によってもひきおこされることが知られており、人口哺乳で育った個体や、老齢個体に多くみられます。

【症状】

症状としては、食欲不振、流涎、沈鬱、痛みによって転げ回ったり、背彎姿勢などがみられます。また嘔吐ができないことによって呼吸困難の状態に陥ってしまうこともあります。

【治療】

初期の場合であれば、適度な運動や腹部のマッサージも効果的であるとされています。消化管の運動を促進する薬や流動パラフィン等を経口投与し、胃内容の通過を助けます。
しかし急性で命に関わる状態であれば、口から胃までカテーテルを挿入し溜まったガスを抜くことがあります。


◆便秘

【原因】

便秘はさまざまな要因によって起きます。チンチラの場合下痢よりもむしろ、この便秘に遭遇するケースが多いようです。食物中の繊維が不足している高エネルギー、高タンパク質の濃厚飼料の給餌が原因となっていることも多いようです。また、ストレスや運動不足が要因となっていることもあります。

【症状】

普段より明らかに糞の量が少なくなります。通常、チンチラの糞は、無臭で大きめの米粒大です。色は褐色か黒で、排泄直後は柔らかく、便秘をしているチンチラでは、糞は固く細く小さくなります。触診では、腹部に硬い糞塊を触診できることもあり、進行すると後肢の不協調または麻痺がみられることがあります。

【治療】

基本的には繊維を増やすことた大切で牧草を与えたり、改善されない場合は、消化器運動改善薬を経口投与します。やはり予防的に、毎日の食餌に乾草を多く与え運動することが大切です。


◆腸重責・腸捻転

【原因】

これらの病気は他の消化器異常に続発しておこることが多く、盲腸曲での捻転、重責が多くみられます。またそのほかの消化器疾患と同様に、食物中の繊維不足が関与していると思われます。

【症状】

激しい腹痛を呈し、便秘や肛門からの腸管の脱出をみることもあります。元気消失、食欲廃絶を呈して、鼓腸やショックを引き起こし死に至ることもあります。腸重責は腹部エコー検査で診断できることがあります。

【治療】

外科的処置、支持療法を的確、迅速に行う必要があります。点滴、鎮痛剤、ステロイド剤の投与を行いますが、予後の悪いことが多いようです。


■皮膚疾患

チンチラの被毛は毛皮になるほど美しく繊細で、一つの毛根から80~100本の細毛が密生しています。また皮脂腺から分泌されるラノリという脂質は被毛に潤いを与え、チンチラが砂浴びを行うことによって、被毛を清潔に保ち、過剰な皮脂を落とします。この被毛は、生息環境の低い気温によって育毛が促されます。感染性の皮膚病では、その生態によるものなのか細菌感染は少なく、糸状菌症が多いことが特徴的です。そのほか、飼育管理に起因するもの、栄養の問題に関連した疾患が多く知られています。


◆皮膚糸状菌症

【原因】

白癬菌(Trichophyton属)、少胞子菌(Microsporum属)の感染によって引き起こされる皮膚病で、幼若な個体や免疫力の低下している個体に発症しやすいといわれています。高温、多湿、不衛生な環境やストレスがなどが発症要因として考えられています。

【症状】

頭部、顔面、鼻や目の周囲、四肢など脱毛、赤斑、フケがみられます。かゆみは伴わないケースが多いようです。

【治療】

抗真菌剤の経口投与を行います。場合によっては、局所的に抗真菌剤の塗布を行います。また砂浴びは、真菌の拡散を助長してしまう恐れがあるため、砂を頻回に取り替えたり、しばらく砂浴びを禁止する場合もあります。

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広範囲の脱毛


◆膿瘍

【原因】

切歯・臼歯の不正咬合は、歯は口の中に向かって伸びるだけでなく、歯の根が上顎や下顎に向かっても伸びてしまいます。反対向きに(下顎骨や目の方に向かって)伸びてしまった歯はそこで感染・炎症を起こし、膿瘍(膿の入った袋)を作ります。

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下顎臼歯の歯根部より感染を起し、膿瘍を形成している

【症状】

膿は時間がたつとチーズ状に固くなってしまうため、見た目には、デキモノのように見えます(写真)。上顎に膿瘍が出来てしまった場合、チーズ状に固くなった膿が眼球を押し出し、出目金のようになってしまうことがあります。

【治療】

治療は、異常な歯を抜くこともありますが、チンチラの顎骨は非常にもろく、抜くときに骨折を起こしやすいことや、犬・猫よりも血管の分布が豊富なために出血が多い、歯を抜いた穴から感染を起こしやすい、痛みから結局食餌がとれないなどの欠点があるため、治療の選択が限られます。 基本的には膿瘍を摘出したり、切開・洗浄と抗生物質の投与を中心とした治療が行われます。

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全身麻酔下で切開し膿を出しているところ。
しかし完治するには長期間に渡ることもあり、また膿の貯留を繰り返してしまうこともあるとても大変な病気です。


◆綿毛(コットンファー)

【原因】

栄養素欠乏症としていくつかの皮膚疾患が知られています。綿毛(コットンファー)と呼ばれる高タンパク食よって引き起こされます。

【症状】

被毛の筋が弱くなり、被毛全体がウェーブがかり綿のような様相を呈します。

【治療】

タンパク質の含有率が15~18%の飼料を与えるようにします。


◆肢端皮膚炎

【原因】

飼育環境の不備(メッシュの固い床、高温、多湿、不衛生な環境)から肉球の損傷がみられ、細菌の感染によって発赤、びらん、潰瘍が続発します。チンチラは主に後肢を使って移動するので、前肢ではあまりみられません。

【症状】

足底部に発赤、びらん、潰瘍などがみられます。その痛みから「はこう」や運動を嫌がるようになります。感染が成立すると、膿瘍を形成したり壊死、骨膜の融解につながってしまうこともあります。

【治療】

抗生物質、局部の消毒、患部の保護、乾燥につとめるようにします。もっとも重要なことは、飼育環境を見直し、発症要因の改善することです。


■熱射病

【原因】

チンチラは涼しい地域に生息しているので、27℃以上の高温、高湿の環境下ではうまく体温を調節することができません。すぐに元気を失ってしまいます。またそれ以上の高温な環境下にすると容易に熱射病に罹患してしまいます。したがって、蒸し暑い部屋に置いたり、直射日光に当たるような場所には置いては決していけません。

【症状】

初期には活動性が鈍り、渇欲が亢進します。症状が悪化すると横たわる姿を見せ浅速呼吸になり呼吸困難、チアノーゼを呈します。

【治療】

空調などを利用して徐々に体温を下げていきます。冷水に入れるとショックを起こすことがあるので注意が必要です。すずしくしてすぐに動物病院へ連れて行きましょう。病院では点滴、ステロイド薬投与など支持療法を行います。