爬虫類は、鳥類と同様に卵を産みます。小鳥でも卵詰まりが命に係わりますが、同様に爬虫類でも命に係わる病気の一つです。
元気食欲不振、逆に落ち着かなくなる、ケージから出たがる、後ろ足で穴を掘ろうとするなどの症状がありますが、漠然と食欲減退などで特徴的な症状が出ないこともあります。
卵詰まりとひとことでいっても、その状態は複雑で、単に卵が詰まるだけではなく、その個体のホルモンバランスや栄養状態、飼育環境によるものがあり簡単ではありません。
爬虫類の生殖器の構造
卵を産む動物には、哺乳類でいう赤ちゃんを育てる子宮はありません。
排泄口の手前の空間である総排泄腔と左右に一対の「卵巣と卵管」とからなります。卵巣は卵胞という大小の黄身にあたる部分で構成されます。
This work, “dystocia in reptile” is a derivative of “Veterinary Histology “by Ryan Jennings and Christopher Premanandan is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial 4.0 International License.
卵が形成される仕組み
卵巣にある卵胞が、卵管に落ち込み、卵管の中に卵胞が下りていく過程で、
卵殻(卵の殻)が沈着し、卵を作っていきます。
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卵巣の変化
卵巣上の卵胞は、繁殖期、非繁殖期で大きさが大きく変化します。
年間を通じて、卵胞の大きさが変わります。非繁殖期では、数ミリの小さな卵胞ですが、繁殖期(発情期)では卵胞が大型化します。
爬虫類の卵詰まりの種類
1)卵詰まり:卵詰まりは、卵塞ともいい、卵管内に卵殻が形成された「卵」が何らかの理由(ホルモンバランスの崩れ、卵が大きすぎる、栄養過不足、産める場所が無いなど)の理由により卵が卵管内でとどまって(詰まって)しまう状態。下のレントゲン写真参照。
2)卵胞うっ滞:ホルモンバランスの崩れから大型の「卵胞」が停滞し、体腔内を圧迫し、食欲不振など何らかの問題を引き起こす状態。下の手術写真参照。
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治療
1)卵詰まり
①薬による内科的治療:卵管内で卵が詰まっている場合(卵詰まり)には産卵促進剤(オキシトシンなど)を注射します。出ない場合には日にち置いて数回打つことがあります。
➁手術による外科的治療:卵詰まりで注射が効果が無い場合に開腹手術によって摘出します。
卵詰まりの手術を行った症例
左、卵詰まりのレントゲン(ホシガメ)、右上、摘出手術中写真(ホシガメ)右下、卵を摘出したグリーンイグアナ
2)卵胞うっ滞
卵胞うっ滞の場合、薬による治療は知られていません。オキシトシンなどの産卵促進剤は効果はありません。また、鳥の発情抑制(過剰産卵)で用いる酢酸リュープロレリンは爬虫類では効果が知られていません。
したがって、卵胞うっ滞の場合は、開腹手術による外科的に摘出することが選択肢になります。
卵胞うっ滞の手術を行った症例
左上、フトアゴヒゲトカゲ、左下、ヒョウモントカゲモドキ、右、ロシアリクガメ
卵胞うっ滞の手術を行ったコーンスネーク
当院は爬虫類の卵詰まり、卵胞うっ滞の治療件数は全国でもトップクラスで、カメの種類によっては、負担の少ない甲羅を切開しない鼠径部(後ろ足の付け根)から摘出する方法を行っています。
他院からの紹介やセカンドオピニオンも可能ですので是非ご相談ください。